56人が本棚に入れています
本棚に追加
/358ページ
29 ザイキンうじゃうじゃ
29.
──砂浜
砂浜ではオレンジのジャージが1人と黄色のジャージの2人がこちらを見て待っている。
漆とウラハとキケツだ。
普通にこちらに姿を見せて仁王立ちをしている様子を見ると、罠のような物は特になさそうだ。手には何も持っていないし、ポケットの小さいこのジャージじゃ何かを隠すのは難しいだろう。
そんなに長い時間待っていたのか漆が不機嫌、というか可愛くない顔をしているから一応言葉だけでも、彼女に謝っておこう。
「すまない。待たせてしまって申し訳ない」
漆「そんな社交辞令や他の話はどうでもいいわ。私から1つお願いがある」
シドウ「へ?。いつになく素直だな」
「そこのバカは気にせずそのお願いを聞かせてくれ」
漆が俺に向かって無言で歩き始めた。表情も一切変えない。
赤い髪を揺らしながら向かってくるそんな漆を見て、ギンターが俺を守ろうと騎士のように駆け寄るが、俺はそれを手で中止させた。
目の前まで来た漆は呼吸を整えると、俺たちに向けて、
「タマゴを殺す。だから、協力して欲しい」と呟いて頭を下げた。
彼女のその小さな声は震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!