29 ザイキンうじゃうじゃ

1/4
56人が本棚に入れています
本棚に追加
/358ページ

29 ザイキンうじゃうじゃ

29.  ──砂浜  砂浜ではオレンジのジャージが1人と黄色のジャージの2人がこちらを見て待っている。  漆とウラハとキケツだ。  普通にこちらに姿を見せて仁王立ちをしている様子を見ると、罠のような物は特になさそうだ。手には何も持っていないし、ポケットの小さいこのジャージじゃ何かを隠すのは難しいだろう。  そんなに長い時間待っていたのか漆が不機嫌、というか可愛くない顔をしているから一応言葉だけでも、彼女に謝っておこう。  「すまない。待たせてしまって申し訳ない」  漆「そんな社交辞令や他の話はどうでもいいわ。私から1つお願いがある」  シドウ「へ?。いつになく素直だな」  「そこのバカは気にせずそのお願いを聞かせてくれ」    漆が俺に向かって無言で歩き始めた。表情も一切変えない。  赤い髪を揺らしながら向かってくるそんな漆を見て、ギンターが俺を守ろうと騎士のように駆け寄るが、俺はそれを手で中止させた。  目の前まで来た漆は呼吸を整えると、俺たちに向けて、  「タマゴを殺す。だから、協力して欲しい」と呟いて頭を下げた。  彼女のその小さな声は震えていた。     
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!