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立っているのもバカバカしく感じて座ろうとした時、急に正面の灰色の壁が、音を立てずに横へとスライドし始めた。突然の出来事に声も出ない。
暖かい風が流れ込んでくる。
その風に乗って、この灰色の世界を壊す白い光が差し込む。
あまりの眩しさに顔を両手で隠した。
だから俺は、外からこの部屋に入ってきた声の主の顔を見れなかった。
でも喋り方と声から生意気な子供。多分小学生だろうと推測した。
???「あー。早く起きちゃったの?君は薬が効きづらいんだね。でも、ちょうど着いたから出てきなよ」
俺にそう言った少年はどうやら先に白い光の世界へ行ってしまったらしい。
特に警戒せず、両目を光に慣らしながら、外の暖かい空気へと近づく。
どこに着いたのかさえ俺は少年に聞かなかった。
とにかく、ここから出られるのならどこでも良い。
光があって、温もりのある場所へと早く向かいたい。
そんな想いで灰色の部屋を出ると、そこは暖かい砂浜だった。
足元は白い砂浜で、空は青。浜辺の奥には緑が豊かなジャングルが見える。
そんな自然にピッタリ合う、心が安らぐ波の音が背後から聞こえてくる。
そういえば、自分が乗ってきた船はどんなものだろう。
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