第1章 三界

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「皇帝が死んだか…悪魔の中にいるとはあまり思えないな。となると天使か。」 「そうだね。ちなみにそれ、魔法?」 「ぽいよー。リューゲに見せてもらったけど出血の仕方と体の変形具合的に、使われたのは多分重力魔法だね。」 流石、天才魔法使いを自称しているだけのことはあり、死体を見ただけで死因と使われた魔法を言い当てた。 「重力魔法ね…兄さん詳しんじゃない?」 「詳しくはない」 「あ、ルベ兄のはないよー。これ打たれてるもん」 「打つ?」 シュルトがオウム返しをすると、ルナは淡々と話し出す。 「兄さんのは固有概念に対して発動されるけど、これはそうじゃない。重力自体を生き物にして向けてるからね。」 そう。本来、重力魔法は重力自体に魔力を加えるものだがルベルの場合、固有概念…つまり一定の『何か』に重力を与えたり消したりすることが出来る。 「へー。そこまでわかるんだ」 「まぁね!なんたって天才だから!…まぁ、兄さん以外にあんな重力魔法を使える人見た事ないのもあるけど」 シュルトの興味の無さそうな関心に鼻を鳴らして腕を組み、得意げな表情をしたと思ったら、目線をそらす。忙しい。 「たしかに。ボクも見たことないかな」 「(あたし)達にも出来ないしね~なんで~?」 「知るか。そろそろクラヴィスに呼ばれる頃だろうし、この話はお開きだ。………部屋についても話しとけ」 「ヴぇーー!ルベ兄おねがいだよぉ!私の今日のおやつあげるからー!」 「1度お前の手に渡ったものを食べたいと思わない」 「そんなーー!」 いつも通り、うるさく強請るルナをかわすルベル。本人達…主にルナは必死なのだが、傍から見ると本当に楽しそうで、仲のいい兄妹がじゃれあっている光景だ。 一方、その後ろで 「………皇帝…ねぇ…」 (彼女)は深く考えていた。魔界の皇帝について、なにか引っかかることがあるようで……
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