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吸血鬼達がそれぞれの国に向かったと同時刻……
「……ご報告申し上げます。件の吸血鬼達が第20国、第58国、第59国に侵入すると見られていると連絡が入りました。」
「なっ?!姉上!」
肌の黒い侍女が、吸血鬼達の襲撃を報告する。
「………わかってはいたことだな。アイツらは」
「話をした途端、一目散に飛び出していきました」
「ならいい。アイツらの"欲"の赴くまま、吸血鬼を殲滅してもらえればいいんだが」
「姉上、私も!」
長く伸ばした黒髪を揺らし、椅子から立ち上がる彼女こそ、次期皇帝であるサンドル・ヴィダ・ユエレウ・ヘレ・ゼオルタリア。
そして、彼女を姉上と呼ぶのが、帝国第4皇子、カエルム・ザレス・ユエレウ・ヘレ・ゼオルタリア。
「お前は自分の立場を弁えろ。我は爺共と話をつけてくる。インベル、第20国、第58国、第59国の王に今すぐ国を手放し帝都に逃げるよう伝えろ。護衛は奴らに任せてあるともな」
「承知致しました。ゼノ殿下へは如何致しますか」
インベルと呼ばれた黒肌の侍女は、冷静に、丁寧に主の言葉をききいれる。
「問題無い。アイツのことだ、もう勘づいて動いてることだろう。
カエルム、間違っても戦場に立っているということがないようにな」
「…はい」
「…………兄上…………必ず…」
この魔界の中心で、破滅を拒む者が権力と暴力を握り締めながら己のあるべき姿を実現させる一歩を踏み出した。
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