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「…お兄様…急いで駆けつけないと…
_____!!」
クレーベルは兄の交戦に気付き、進行方向を変えた。
……と、同時に上空から無数の魔弾が降り注ぐ。
「…はぁ…はぁ……うっ…」
避けきれなかった彼女は、負傷した左腕を庇いながら急いで敵の現在地を確認する。
「あらぁ〜片膝着いちゃって可愛い♡」
薔薇のように甘ったるく、夜の海のように惹き込まれる声の主は、クレーベルを見下ろす。
また、かなりの露出度、わかり易すぎる淫魔。ソレをクレーベルは見上げた。
________変態だ。
そう、クレーベルは思った。
「…セプテム・ペッカータ・モルターリア…」
彼女の印象を浮かべた後、重要な情報も頭に浮かんだ。
このあまりにも深く広い、魔界の守護者達…クレーベル達吸血鬼の、現在殺すべき対象。
「まぁ!私達のことをご存知?
でもここは礼儀として、名乗らせて頂きましょう!
セプテム・ペッカータ・モルターリアが一罪、七番目の大罪。万人の恋人、はたまた愛人……色欲、ルクスリアと申します♡」
「………そちらが名乗るのであれば、こちらも名乗るのが礼節……虐殺に秩序も何もありませんが…
貴方々が吸血鬼と呼ぶモノの一人、クレーベルと申します。
…では、死んで頂きます。」
クレーベルは腰に掛けていた、一冊の本を取り出す。
「む…貴女、魔導書使い?
あのガリ勉低級魔法?まさかそれで私と戦うつもり?」
ザインは彼女が本を取り出した事から推測できる悪口をズバズバと口にする。
一方のクレーベルは、彼女の言葉に興味はなかったが、あまりにも不適当なことを言うので訂正をしたがった。
「………言っておきますが、私が使うのは魔導書だけではありませんよ。」
「………?」
クレーベルの本はひとりでに浮かび、ページを進める。
そしてその本の持ち主は、一呼吸おき、語り始めた…
「__幾度も、幾度も、浮き上がる。
………幾度も、幾度も、降り注ぐ。
宝石の輝きは終わりを知らず、砂漠の風は運命を受け入れる。
……叫び、苦しみ、嬉嬉として…悶え、嘆いて、歓喜に酔いしれる。」
________天使のような声で
「死者の行く末は大きく反転し、生者はそれを死ぬ間際にまみえる。
始まりの唄、終わりの唄、それは大袈裟に、大胆に、眠りへと誘うでしょう。
貴女が望む悪夢へ……
貴女を呑み込む理想郷へ……」
________悪魔のような振る舞いで
「へぇ…創造魔法じゃない、素敵ね♡」
クレーベルが語り終えると、辺りは先程とは全く異なる光景になっていた。
崩壊寸前の国ではなく、落ち着いた雰囲気の、広すぎる図書館。
「ご明察。まぁ、貴女の知るモノとは大きく異なると思いますが」
創造魔法とは、使い手の知識と想像力がなければ成り立たない魔法。無論、そこに"無かった"ものを"ある"状態にするため、魔力の消費量も並大抵のことではない。短剣1つ作るにしても相当の量を消費する。
……はずなのだが…
「異なるも何も、空間を創造なんて聞いたことないわよ。」
そう、クレーベルはそんな常識のようなものを吹き飛ばすことをした。
空間を作ったのだ。正に彼女のテリトリーである、彼女の図書館だ。
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