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「この魔界を滅ぼすんですか?」
「ああ勿論。」
「無意味だとは、思いませんか?」
「無意味?どうして?」
「貴方方の話は聞いています。天界に作られた兵器、だと」
「……そうかい。ならわかるはずだ。本能には抗えないタチなんだよ。君達と同じでね」
「_____っ!ベートさん!!」
「……ッ!」
一瞬だった。トラオムがベートの片腕を"取った"のだ。
「はっ、ハハハッ……ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ喋ってばかりじゃダメだろ…?俺達はここをぶっ潰しに来たんだ!!」
「……………………」
「ベートさん…彼、匂いが違います。まともに戦うのは駄目です。」
「…」
ヴァヴがベートに小声でそう伝えると、ベートはトラオムをじっと見た後、まだ崩れていない街の方に逃げていった。
「兄ちゃん、俺アイツ追う」
「わかったよ。十分気をつけてね。」
「ん…」
トラオムは兄の許可を得ると、そそくさとベートを追って、建物の影に消えていった。
「さ、あっちはあっちでやるだろうし、僕達も始めようか。」
ニッコリと微笑んでヴァヴを戦いへと誘う。
天使のような笑みに宝石のような美青年。
戦いの誘いでなければ頷くを得ないのだが…
「………(彼はなんだ…?かなり強力な魔力を持ってるし、それに…)」
ヴァヴはクラヴィスの匂いの異常に気付く。
あまりにも強すぎる魔力の質に量…
……それに、だんだん膨張している…?
「___音」
「力!(何今の…?!音の振動で"空間を斬った"?!)」
クラヴィスの魔法、音の発動にギリギリで気付いたヴァヴは反射で魔法の方向を自身の"腕"で変えた。
どちらも普通とは言い難い。
空間すらも切り裂く音の風。それを受け流す腕……
「(……外した?いや、逸らしたのか……腕で?……もしかして…)」
「(空間を切り裂く音…こんな使い手魔界にも天界にもいない…!)」
互いに分が悪い。と思っている。
これでは消耗戦になってしまう…のだが…
「……音」
「!…力!!」
同じ手を使う。
単純な音の魔法と、単純な力の魔法…
しかしその精度は並ではない。どれだけ単純で初歩的な魔法だとしても、到達するのに才が必要な領域の、高度なもの。
魔力の消費も激しい……のにも関わらず、彼等はそれを何回も繰り返す。
「……このままじゃ消耗戦になるよ。いいのかい?」
「…あまり良くないですね…これじゃああの方に怒られます」
「あはは、じゃあそろそろ本気でやるかい?」
「勿論。____解放」
「それは……成程…」
先程のトラオムと同じモノ。かなり強力なものだ。
「さっきの彼、あなたとは匂いが違いました。吸血鬼は特有の匂いがするので判断しやすいのですが、彼は違いますね。僕達にも近いし、あちらにも近い。
"彼は本物の作り物ですね?"」
最後の一言、その一言を聞いてクラヴィスは硬直した。しかしそれは一瞬で、直ぐに我を取り戻したのだが…
「_____流石は暴食…匂いだけでそこまでたどり着くとはね…ここに兄さんがいなくて良かった。」
その顔は笑顔だった。声色もいつも通り優しかったはず。
「…」
ヴァヴは感じ取った。否、感じ取ってしまった。
彼の怒りを。
「はははっ…あー、いや、これはダメだな。キミを八つ裂きにしないと気が済まないよ。」
彼等の愛というものの形を
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