第2章 魔界

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「うっ……!!」 クレーベルはザインによって後方の本棚に吹き飛ばされた。 クレーベルは自身の体を確認すると、右の腹部が無くなっていて血が止まることを知らず流れていた。 「あぁ、ごめんね?痛かった?」 ザインを目視すると、先程のは幻覚では無かったと確信する。 さっきまでのザイン…女性はどこにもいない。今目の前にいるのは彼女とは違う青い髪の男性。 「…はぁ……っ…」 息を整え、無くなった腹部を再生させる。 「あなたは………」 「こんにちは、花のような君。僕はルスト。 さっきの彼女は僕の裏側面、そして僕は彼女の裏側面。 僕らは人格も身体も全くの別人だけど、同じ体を共有しているんだ。それから…」 「……(コール)げ」 話を続けようとする彼の不意をつこうと魔法を発動させようと、本に呼びかける…が… 「まだだよ。話は終わってない…」 「うっ……!!………っ…はぁ…はぁ…」 不発…… それに、今度は右腕。右腕が無くなった。 しかしそれも、クレーベルは再生する。 焦る。なぜ、どうして、攻撃できないの? このままでは負ける。解決策を… 「…なんで魔法が使えないのか知りたい?」 「…………」 図星をつかれ、クレーベルは焦りと嫌悪を込めた目でルストを睨み付ける。 「ふふ、いいね、君。僕も君を好きになってしまいそうだ」 「…も?」 「そう、だって君は、僕に恋しているだろう?」 「……は?何を仰っているのか…」 「魔法が使えないんじゃない。君自身で抑制しているんだよ。」 「…あなたを傷つけようとする時だけ、私はあなたに魅了される…ということですか」 魅了、と言うよりも恋。 クレーベルはルストに攻撃を仕掛けようとすると、"その時だけ彼に恋をする。" 「うーん、そうなのかな? 魅了(コレ)、効かない子もいるし… それに君みたいに攻撃する時だけって子は初めてだよ。」 今の発言通り、彼の魅了は個人差もあれば不明な点も多い。彼のは色欲へ誘うものでは無く、恋の魅了。強要性など全くない。 万人の人間を愛人とする色欲(ルクスリア)の魅了とは似て異なる能力であり、かの魅了よりも弱い。 「私があなたに恋なんて、するわけないからでは?」 「でも今僕のことを傷つけることは出来なかっただろう?」 ということは……でも…と、クレーベルは心の中で自分の思いに疑念を抱く。 「でなきゃ君は問答無用で僕を灰にしていたのでは?」 「だからと言って、今私は全然あなたのことを……それに………」 クレーベルは言い淀む。次の言葉をあまり口にしたくない。 が、ルストは気になり追求する。 「それに?」 それに答える必要はなかったのだが、彼女は口に出した。それもいつもより大きい声で。 「____________________これが私の初恋なんて、認めたくありません!!」
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