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「……」
とりあえず何処かに運ぼうと思った。
……しかし
「俺じゃ無理だな…」
トートは弟ではあるが、ルベルよりも背丈が大きく顔付きも十数歳ほど上に見える。吸血鬼が不老不死だから、と理由付けができてしまうのがどうにも皮肉ったらしい。
トラオムの方はルベルより年下に見える。人で言うと大体16ぐらいか…末弟というレッテルのせいか言動は少し子供っぽいところがあったりもする。
二人の性格などは後ほどわかる事として、ルベルにはこの2人を担いで静かな場所に連れて行ける体力はない。つまり、彼は彼女を頼るしかないということだ。
「………クレーベル」
彼がその名前を呼ぶと、何も無かった灰色の壁に綺麗な塗装が施された茶色の扉が現れた。窓の内側も外側も灰色の世界のおかげか、色が着いたと思う程に、その扉は鮮やかだった。
「ルベルお兄様?」
色鮮やかな扉を自分が出れるくらい開けて顔を覗かせてきたのは少女の姿をした5番目の妹、クレーベル。
彼女はいつも図書室にいる。その扉は彼女の言葉1つで屋敷の何処にでも姿を表すことの出来る、言わば小規模どこで○ドア。
「えぇ?!トトお兄様にトラオム?!」
立っているルベルの足元を見るなり、倒れているトートとトラオムに驚く。
「ルナのやつがやった」
「る、ルナちゃん……また薬を…」
「薬というか毒だな」
あはは…と苦笑するクレーベル。
「解毒してやってくれ。ずっと変な事言ってんだ。」
「はい!お任せ下さい!」
ルベルが2人の治癒を頼むと、クレーベルは笑顔で元気な返事をする。その笑顔は本当に、ただの少女の顔だった。
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