骸骨男

2/20
前へ
/20ページ
次へ
私はいつからおかしくなっていたのだろう。 自分と日時の整合性が取れなくなってしまった。アイツのせいだ。 すべてアイツが悪い、俺と彼女の日常を完全におかしくした。 何かの冗談だろうか、目の前に変なものがいる。 落ち窪んだ目、痩せこけた頬に無精ひげ、髪はまばらに生えている。 まるで骸骨みたいだ、骸骨に皮膚を張り付けているようだ身長は俺と同じくらいだろうか、骨格から男性のような気がする。何も身に纏っていないし、なにも言わない、一切言葉を発しない。男は俺のすぐ後ろを見ているようだ。 ピピピピ・・・ 7時00分を指す電子時計。 重い瞼をあけ、今日もよくわからない夢を見た。胸がむかむかするような気分だ。頭痛もひどい。とりあえず、ベッド脇の時計を手に取った。 7時02分7月12日、間違いない。しばらくぼーっとする。 頭が冴えてきたところでようやく、ベッドから降りる。 床の冷たさを感じつつキッチンへ向かい、電子ケトルへ水を入れる。 スイッチを入れお湯を沸かす。食パンをレンジに入れ、お気に入りのマグにインスタントコーヒーを入れる。ケトルが音を鳴らしたのでマグにお湯を注ぐ。レンジから熱々の食パンを取り出し、マグカップと机にセットしておく。それから、洗面台へ向かい髪を濡らしドライヤーで乾かしセットをする。 リビングへ向かい、ちょっとだけ冷めたコーヒーを飲み、ちょうどいい温度のもちもちのパンを食べる。携帯をチェックしたが誰からの連絡もない、誰かに連絡する予定もないことを確認しバッグにしまう。 昨日準備しておいた、白の肌着、黒のスーツ、白のワイシャツ、紫のネクタイ、少しだけカラフルでまるでクリスマスのような柄の靴下、白い文字盤にピンクゴールドの装飾が施されている時計を身に着ける。 変わらない日常、それが何よりの幸せだ。朝起きて仕事に行く、仕事は嫌いではないが人間関係は面倒くさい。消して悪い人たちだけではないのがさらに厄介なのだ。 いつも通りの日々に幸せを感じつつ昨日と変わらない中身のバッグを持ち、彼はドアにカギを掛け仕事へ向けて出発した。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加