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平日の朝6時半、里崎峻也はけたたましく鳴る目覚まし時計で起きる。
「もう、朝か……」
峻也は目覚まし時計を止めると、洗面台へ行き、顔を洗う。その後リビングへ行き、テレビをつける。
『速報です。京都でまたしても殺人事件が起きました。被害者の男性は鋭利な刃物で複数刺されていたそうです。京都府警は、連続殺人事件と睨んで捜査を続けているそうです』
「また京都か……」
峻也はうんざりしたようにつぶやくと、台所に行って目玉焼きを作る。彼は36という若さで、大手企業の幹部にまで登り詰めたエリートサラリーマンだ。東京の一等地に一軒家を構えていても、貯金が貯まっていくほどの給料をもらっている。傍から見れば人生の勝ち組だが、峻也はまだ独身で、恋人もいない。
背はそれほど高くはないが、小さいということもない。顔立ちも悪くはない。会社にだって、女性社員はたくさんいる。
では何故、恋人すらいないのか?
峻也が若くして幹部になったのは、仕事に対するストイックな姿勢が大きな要因だ。一切の妥協も許さず、自身にも部下にも厳しい。職場の人間は、営業スマイル以外の彼の笑顔を見たことはないだろう。峻也は常にトップの成績をおさめていた。
女性社員達はニコリともしない峻也に、近づきもしない。
仕事熱心なために出世し、仕事熱心なために女性が寄り付かないのだ。そんな彼でも、結婚願望がないわけではない。
「そういや明日か、婚活パーティー……」
彼は明日の休日、人生初の婚活パーティーに行く予定である。
峻也は目玉焼きにコールスローを添えると、ごはんと一緒にリビングに持っていく。テレビを見れば、まだほとんどが京都で起きている連続殺人事件を報道している。今はコメンテーター達がディスカッションを繰り広げている。
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