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峻也は次こそまともな話ができることを願った。だが、結局金の話をされてしまった。その後の女性達も、みんな峻也の職業を知った途端、目の色を変えてしまう。
ようやく金目当てではない女性がいたと思えば、仕事の取引を始めようとするものだから慌てて止めた。
(なんだよ、女って金で結婚する生き物なのか?)
疑心暗鬼になりつつも、次の女性の前に座る。
「はじめまして、よろしくお願いします」
紺色のワンピースを着た女性は、一礼しながらプロフィールを渡してくれた。
「はい、よろしくお願いします」
峻也もプロフィールを渡し、彼女のプロフィールを見る。
本間千夏、29歳、フリーカメラマン、趣味は峻也と同じく日帰り旅行。
(清楚系の可愛い子だし、これで金の話さえしなければ……)
峻也は同じ趣味で感じのいい女性を見つけたことに、喜びを感じた。期待をしながらプロフィールを読み進める。
(なんだ、これ?)
交際期間には、“早急に結婚”と書かれている。
「里崎さんも、日帰り旅行が趣味なんですね」
千夏は目を輝かせながら、峻也をまっすぐ見る。
「はい。喧騒にうんざりして、自然が多いところに行くんですよ」
「私もです! 写真もたくさん撮って、それが偶然仕事に使えることもあったりして」
嬉しそうに話をする千夏を見ながら、峻也はこの人しかいないと思った。
他の女性との5分はとても長く感じたのに、千夏との5分はすぐに終わってしまった。 千夏の後に数名の女性と話したが、峻也の心は変わらなかった。
立食の時間になると、5、6人ほどの女性達は峻也の元に来た。その中に、千夏はいない。女性達の隙間から探すと、寂しそうな顔をした千夏がこちらを見ていて、目が合った瞬間に俯いてしまった。
(逃してたまるか)
峻也は女性達をかき分け、千夏に歩み寄る。
「本間さん」
名前を呼ぶと、千夏は顔を上げて驚いた。
「里崎さん……。いいんですか? あの方達は……」
千夏は自信なさげに言う。シンプルな服装の千夏に対し、他の女性達は派手に着飾っている。元々の性格もあるだろうが、見劣りしているとでも思っているのだろう。
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