いつでもそばに

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そんな安心安全な地域掲示板でぼくがお世話になっているのが「のほほんルーム」だ。地域掲示板には30ほど種類分けされた掲示板があり、「グルメ」「子育て」「仕事」「出会い・婚活」などジャンルが明確なものから「今日のひとこと」「びっくり」「大喜利」など、一見何を書けばいいか悩みそうなタイトルのものもある。 ぼくは一見悩みそうなタイトルの1つ「のほほんルーム」になぜか夢中になってしまった。それは多分、初めて見た書き込みが『くるみ』さんだったからかもしれない。 「小学生の女の子が笑顔でおはようございますと言ってくれた。今日も頑張れそう」 たったこれだけの文章にぼくはタイトルさながらのほほんとした気持ちになった。 一年半前はのほほんルームにも数人が常駐していたが、気がつくと『ムサシ』と『くるみ』しか発言しなくなっていた。お互い、何気なく書いている発言も、時が進むにつれ相手への返信のような形になっていった。 いつもぼくの隣にいた妻。永遠に一緒にいるもんだと思っていたから、2年前の妻の急な死を受け入れるのに時間がかかった。ぼくの憔悴しきった様を見て心配したのか息子夫婦から何度か同居の誘いがあったが、妻との思い出が詰まった家を捨て県外に出る気になれなかった。そんなぼくが夢中になり、再び生きる活力をくれたのが地域掲示板だ。 「さて、そろそろ出かけるか」 時計は午後三時五分前を示していた。夕飯と明日の昼までの食事を買いに近所のスーパーへ出かける。週に五日はスーパーで惣菜を買うか外食で済ませる。
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