いつでもそばに

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いつでもそばに

「小学校1年生くらいの子たちが、自分の上半身よりも大きな引き出しを重そうに抱えよたよたと歩いていました。もうそんな季節なんですね」 三月中旬の新しい書き込みは卒業式の話題だった。 ぼくの息子や娘も小学生の頃、三学期最後の日にプラスチックでできた青い引き出しを持ち帰り、きれいに磨き、新学期に再び持って登校していた。子どもたちはもう四十歳を超えているから、三十年以上前と同じ事を今も続けている事に笑えてくる。 「この地域の桜の開花は4月10日頃の予想でしたが日の出公園の南側の桜の木が一輪の花を咲かせていました。近頃暖かい日が続いていたから狂い咲きでしょうか」 文章を打ち、「送信」ボタンを押す。すると、ぼくのハンドルネーム『ムサシ』と共に画面に文章が表示される。ムサシは昔飼っていた柴犬の名前だ。 ぼくが1年半ほど前から夢中になっているのが、住んでいる市内の情報などを好きに書き込めるウェブサイトの地域掲示板だ。掲示板は個人情報を正確に入力しないと参加できないシステムになっている。参加者同士は匿名で発言しているが、運営側からはどこに住む誰が入力しているか丸わかりなため、変な書き込みや嘘情報、誹謗中傷など一切ない。
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