好きな人こそ

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中学では、陸上部に入った。 身体を動かすのは嫌いじゃなかったから、なんとなく、運動部がいいな、と思って。 でも、チームプレイは苦手だった。 自分のせいで負けるとか、考えるだけで吐きそう。 だから、陸上部。 完全な個人プレー。 結果の善し悪しは、全て自分次第。 そんなところが、性に合っていた。 結果は自分ひとりで出すものでも、練習は自分ひとりでするものじゃない。 部内は、男女比は半々。 普段は男女分かれて話していることが多いけど、別に仲が悪いわけじゃなかった。 「倉木さん、これ、お願いしてもいい? 」 そう言って、ストップウォッチを手渡してきた人。 同じ学年の男子よりも、背が高い。 優しい声と、大きな目。 1つ上の先輩。 「ええ! 孝介先輩!? 」 同い年の、陸上部の友達である瑞香に伝えたら、酷く驚かれたのを覚えてる。 「なんで!? もっとかっこいい先輩いるじゃん!! 」 「えっ、孝介先輩が1番かっこいいよ。」 私は真剣に答えているのに、冗談でしょ?とか、ありえない、とか。 もう段々先輩に対して失礼だよ、って思えてくる。 「どのへんが? 」 「うーん。例えば、この前熱かった日に、『テントの中入れてる? 』ってきいてくれたり。」 「..え、うん。」 「スタートラインの線、全然真っ直ぐ引けてなかったり。」 「うん。」 「あとクラス会の時、めっちゃ楽しそうにワッフル焼いてたらしい。バイキングで。」 「それ誰からきいたの。」 「ひより先輩。孝介先輩と同じクラスだから。」 「えっ。あのさ。それのどこがいいの? 」 「可愛いじゃん。顔はかっこいいのに、ちょっと抜けてたりするところがギャップで。あと、後輩のこと心配してくれたり優しい。」 「あれよりかっこいい顔もっといるから。あと、ほかの先輩も声掛けてくれるから。」 「孝介先輩って、人と話すの苦手そうじゃん。普段もあんまり話さないし。そんな人が心配してくれてる、ってことに意味がある。」 「いや....よくわかんない。」 私はなんでわかってくれないのか首を傾げたくなるし、瑞香は私の言ってることに共感できなくて首を傾げてる。 「雛って、男の趣味変。B専? 」 「酷っ! それは先輩にも失礼だからね。」 「雛は可愛いのに。勿体ない。」 「可愛くないし、孝介先輩と付き合えるなら本望。」
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