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ほぼ毎日、1度は孝介先輩の話をしていたせいで、部活中はいつもより意識してしまうようになった。
私と孝介先輩が偶然隣りどおしで並ぶとか、ちょっと業務連絡しに来てくれるとか、そんなことがあれば直ぐに瑞香は私の方を向いてニヤニヤしたり肘で小突いてきたりする。
「あんなことしてたら孝介先輩にバレちゃうって。」
「えっ。絶対大丈夫でしょ。孝介先輩、絶対鈍感だよ。あと彼女もいたことないんじゃない? 」
「それはわかんないよ!! あんなにかっこいいし!!」
「だからそう思ってるの雛だけ。」
何ヶ月話しても、瑞香は私の気持ちをわかってくれないし、私も瑞香の気持ちがわからなかった。
あんなにかっこいいのに。見る目ないなぁ。
何度そう思ったかわからない。
でも、瑞香に「そんなことない」って言われることで、安心していた部分もあった。
心のどこかで、私だけが孝介先輩のいい所を知ってるって、私だけが孝介先輩のことを好きなんだって、そう思えた。
「そういえば次の大会、もう3年生は出れないからさ。」
「うん。もう引退だもんね。次は新人戦だし。」
「そうそう。で、1・2年だけで出ることになるでしょ? リレーとかも全部。」
陸上部は、バスケやバドミントンと違って、そんなに人気があるわけじゃなかった。
少なくとも、うちの学校では。
だから、部員数も多くなくて。部内の3分の1はリレーメンバーに入れる、くらいの人数だった。
それでもやっぱり、リレーのメンバーという貴重な選抜が存在するわけで。
それにはどんなに小さいチームでも、緊張感が伴うものだった。
「そっか。男子のリレー、どうなるんだろうね。3年生ばっかりで組んでたもんね。」
「それがね。今度の大会、孝介先輩が2走らしいよ。」
「えっ。え? え、なに。どこできいたの、それ。」
「陸部の先生達が話してるの、きこえた。」
孝介先輩は、100m走のエースだった。
4×100mリレーは、実は2走が1番の華型だと言われている。
なんでかはよくわからないけど。
2走が1番速いのが、定石だった。
私も陸上部に入って始めて、1番速い人=アンカーではないのだと知った。
孝介先輩が、2走。
その響きだけで、トリハダが立った。
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