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保身
「いいんだ…」
「いいんだよ…」
「私はいいんだ」
「それよりも、彼を救わないと…」
自分のことよりも、他人を大切にし心配できるこの男に対し、自分が自己中心的な【保身】の心しか持てなかった事をサトミは反省し自らを恥じた。
そして、
【この人なら信じられる】
と初めて他人を信じることができた。
極限の状態でこそ、心の底からの【信用】【信頼】は生まれないのかもしれない…
今までの、自分が持っていた【信頼】はすべて薄い膜のようなものでしかなかったことにサトミは気づき始めた。
「おじさん」
「どうしたらいいの…」
「私、カズくんを助けたいけど」
「どうしたら…」
行き詰まったサトミは、唯一の頼みのつなである男に助けを懇願した。
「わかったよ」
「わかるよ」
「彼を助けよう」
「この馬鹿げた事を乗り越えるには【本当の信頼関係】が絶対に必要だ」
「【人を信じられなくなるほどの恐怖】に打ち勝つ自分の勇気が必要だよ」
「だからなにがあっても私たちは【信じあうんだ】」
「わかったね」
サトミは男の眼をみて頷いた。
「よし!」
「まず、落ち着いて考えよう」
「彼を助けるために必要なこと」
「やるべきことを考えるんだ」
「おっと、そうだ」
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