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マンネリ
舞台は、どこにもありふれたカップルの日常から始まった。
何気ない日々…。
【愛】とはなにかを求める者たちに…
【真実の愛】を―――
カチッ、カチッ、カチッ(マウスをクリックする音)
「ねぇねぇカズくん」
「この豪華客船ツアー」
「限定五組貸し切りだって♪」
「素敵じゃない?」
カズはテレビゲームをしながら、かったるそうにタバコをモクモクくわえている。
「ああ…いいんじゃない?」
話を聞いているのか、いないのか分からない台詞が煙たさを感じさせる。
けれど、いつものことなのでワタシは気にせず、言いたいように独り言をいって夢心地になっていた。
「じゃあ申し込んでおくね」
矢印を申請のマークに合わせてネットから手続きを行い申し込みしようとする私。
「で?いくらなの?そんなに金ないけど俺」
腰の重いカズは、いつもシリに火がつかないと考えを言わない。
「十日間で五万円だって」
「抽選当たるといいなぁ」
返事を待たずに私はカチッとクリックして申請を終わらせた。
「はぁ・・ねぇ、何か面白いことしよーよ」
サトミがカズの腕を揺らしながら話しかける。
「ああ、、もう、いまやめろって、手がブレるだろ?」
「面白いことっていっても、金ねぇし!」
あからさまに面倒くさそうに答えるカズ
「じゃあ、面白いこと話して!」
「ねぇ!ねぇ!」
サトミはフグのようにホッペタを膨らませてはぶてる。
「あー。今、イベ中だから、あとでなー」
カズは淡々とゲームを続けた。
「・・・もういい・・」
サトミはそこから立ち去り、リビングのテレビの電源を入れた。
もうこんなやり取りが五年も続くと
怒るエネルギーもなくなってしまう。
あきらめる事を覚えたカップルに生きた恋愛なんて出来ない。
だから、新しい【刺激】を求めてこのツアーに参加しようと思ったんだ。
いまになって思う…
【刺激】が欲しいなんて欲張るんじゃなかったと…
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