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「私の【名前】もまだ名乗っていなかったね」
「私の名前は【馬場】」
「馬場、伸幸(ババノブユキ)です。よろしくお願いしますね」
「妻は優子(ユウコ)」
「もう結婚して二十年になる…
少し寂しげな表情をした馬場を見てサトミは心のうちを悟り、わざとらしい笑顔を贈った。
「私は本城智美(ホンジョウサトミ)」
「彼は坂上一哉(サカガミカズヤ)」
「付き合ってもう五年になります」
「私は結婚したいんですが…彼はまだその気がなくて…」
「あっそんな事、今は関係ないですよね」
「すみません」
「私、口が軽くてつい…」
そう言って自分を駄目な人間にみせてサトミは相手を安心させようとした。
「いや、君が話すとなぜか私がホッとできるよ」
「いいんだ」
「私はあなたを【信じられる人】と始めからわかっていた」
「長く生きるとね。人を見る目だけは肥えてくるもんさ」
「苦労したからね。その自信はあるよ」
「さあ、今は時間が大切なときだ」
「彼を助けるために考えよう」
散らかった部屋を片付けながら馬場は話しを続けた。
片付けなんかいいですからとサトミが馬場の行動を遮(サエギ)る。
馬場はフッと微かに笑みを浮かべた。
「いや、部屋を片付けてるとね。なんというか頭の中もスッキリしてくるんだ…」
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