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穏やかな顔をしたエプロン姿のユウコがキッチンからでてきた。
馬場は子供のようにユウコに抱きついた。
弱い男は母のような優しさに心を慰めてほしかった。
怒りが次第に涙とかわり赤児のころの柔らかく歪んだ顔に戻っていく。
馬場に上手を取られてしまった料理途中のユウコ。
コンロには作りかけのシチューがたぎりはじめボコボコと湯気をふきはじめた。
その右手には鋭利な出刃包丁が輝いている。
「どうしたんですか?…」
「ユウコ少しだけ、こうさせておいてくれ…」
「あなた…」
ゆっくりと両腕を上げるユウコ
『おお』
『チャンス!』
『このままサクッといけ!』
『相手を信じていればいるほどに、人は無防備になりやすい』
『なついた猫ほど殺すのは、たやすい』
『ライブ中継を見ている皆さんから、【殺せ!】とツイッターがバンバンきてるんだ』
『早く、早く』
『やれやれ~』
食い入るようにモニターを見る支配人の顔はなんともいえない歪んだ顔をしている。
獲物を狩る野獣のように、これから訪れるであろう快楽を想像して興奮しているのだ。
馬場の背後に包丁がまわる…
『いけ!』
『殺せ!』
しかし、支配人達の思惑はハズレてしまう
ユウコは左手に包丁を持ち替えて、静かにキッチンに置いただけ…
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