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Chapter1 檀木ルカ
「ルカは、この植物たちの気持ちになったことはあるかい」
「......え?」
2020年、12月24日。
僕は、リョウタロウともっと、親しい関係でいたいだけで、そう伝えただけだったはず。
マンションの屋上、硝子天井の温室。雪降る聖夜に花を咲かせる植物園には、あたたかな光が満ちていた。真ん中には大屋根を半分開けたグランドピアノ、ベッドもキッチンも、テレビやコンピュータなどの家電の類もない。眠る時は連弾椅子に横たわり、喉が乾けば箱で買われたミネラルウォーターを飲む。栄養は、完全食のドリンクで補う。
「彼らは常に太陽や光を拝み、雨の代わりに適度な湿度を、適温を保たれこの室内で育っている。ピアノや植物に最適な温度と室温があるように、人間にもその人自身にあったあり方というものがある。俺にとって......これが自分の生き方なんだと思う。そして思うに、ルカはこれで飽き足りる訳が無い」
方丈リョウタロウは、そんな植物のような人だった。......そう、本当に植物のように綺麗で、自分の生き方を貫く人間なのだと、僕は実感し、乙女心ながらにリョウタロウという人間を知りたくなったのだった。
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