0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
イの国には決まりがありました。
「草木を切ってはならない」
お花を愛した故王妃を想ってみんなで考えたのですが
そのせいで大変なことになりました。
昔話だとこういうのありますよね?
「鯨を殺すとかわいそう」とかのせいで増えすぎた鯨が海の魚を食べ尽くしてしまって自分達が食べる魚がなくなって困ったり、「戦争禁止」とか言ってたら隣の国が悪さをしてきた時に酷い目にあったおばかな国がね。
イの国も大変な事になりました。
何せ、野菜や果物を食べる事すらできなくなったのですから。
「これが人間だったらどんなに酷い事か、想像してみて。見た目のよい物を残してそうでないものを切ったり、出来不出来で値段をきめて金に変えようだなんて」
故王妃さまの言葉です。
食うかどうかも大変ですが、他にもたくさん問題が起きました。
舗装されていた道路から雑草が(雑草という言葉が良くないと言い出す「専門家」が現れたせいで、この単語は実は発禁ものです)あちこち生えてきてもそのままですから、アスファルトとか、あちこちから伸びだした植物のせいでボロボロになって,遊牧民がヤギや羊に草を食べさせて回る事すら、不敬であると言い出す「有識者」が現れるに至り、民の暮らしは崩壊しました。国中のび放題の草木の横で飢えて転がる死体であふれました。
さすがにもう嫌になっちゃったので、黙って出て行くことにした男の子がいました。
「もうさようなら」とか言おうものなら、その時だけは引き止めたり仲直りしたがったりされるので、こういう時は黙って出て行くに限るんですよね。
そんでもって、
剣をつくったよ。「刈る」事だけは決めていましたので
かたっぱしから草を薙ぎはじめました。
国は大騒ぎになりました。
何かの拍子に剣と何か硬いものが当たって火花が散り。
あっという間に火が燃え広がりました。
たくさん燃えました。
人とか。
杉とか。
通勤ラッシュと花粉症が都内からなくなりました。
おしまい。
最初のコメントを投稿しよう!