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「昔のようにこの境内でお祭りをして、沢山の人達の声で溢れさせたい。お祭りの時だけではなく、たくさんの人が集う場所にしたい。……これは、私ができる最大で最高の『お返し』です」  男はそう言って、僕と視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。夕暮れの風が吹く。ふわふわの、僕の尻尾がさらさらと揺らされていた。ぴんと立った耳に戯れる風が、少しだけこそばゆかった。 「初めて私の友達になってくれた感謝を形に」  目の前に広げられた紙の上では、たくさんの人が賑わう境内が乗っかっている。それはまるで、子供の落書きのような絵だったけれど、僕の脳裏にも、昔々の賑やかな境内がはっきりと浮かんだのである。 ***  ――お稲荷さんの祠には、狐の仮面をつけた男がいる。男曰く、この祠には、随分と可愛らしい稲荷神の使いがいるそうだ。小さな狐の神使いは、ふわふわ尻尾を揺らしながら、今日も境内を歩いていると言う。そんな男の話が聞けるのは、毎年、初午祭が行われるようになった、小さな町の稲荷神社である。
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