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 ずっとずっと、夢を見てる気分だった。  元気に野山を駆け回る同い年くらいの子供達を、石段に座ってぼんやりとその風景を眺めていた。頭の中がなんだかぽやぽやしていて、目に見えているものが現実なのか、むしろ、本当に僕はここに居るのか。なんて、漠然と思う。  田んぼの中を駆けまわって居た声が遠のき、気付けば皆の声が後方から聞こえた。勢いよく駆け下りて来る彼らを見つめ、それでも彼らは、僕なんて居ないかのように通り過ぎて行く。もしかしたら、僕が彼らを風景だと認識しているように、彼らもまた、僕を風景だと認識しているのかもしれなかった。  石段をまたぐように佇む鳥居と同じ、物言わぬ風景。悲しいとも、寂しいとも思わない。ただ、不思議だった。同じ世界にいるのに、どうして僕と彼らは違うのだろう。別に、同じになりたいとは思わないけれど、違うことには違和感を覚えている。  そんな僕に、『存在意義』という言葉を教えてくれたのは、或る男だった。
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