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熱めのシャワーを流せば、白い湯気が僕達の視界をぼやかした。 「お、水入ってんじゃん、追い炊きしたらすぐ熱くなる?」 圭が風呂の水を指した。 「あー、まあ、10分くらいしたら熱くなるけど僕、昨日入ってるよそれ。」 「いーよ別に。俺いまそんな綺麗じゃねーし、上がったら身体洗うし。」 「そ。」 僕だったら考えられないな、とか思いつつ追い炊きボタンを押した。 頭洗ってやるっていう圭に甘えて、シャンプーしてもらったり、 小学生の頃みたいに泡で遊びまくってたら身体は温まっていた。 男にしては甲高い圭の笑い声が風呂場にひびく。 「あっったけーーーー。最高だわ。」 「あ、入浴剤入れる?なんか会社の人に貰ったのあるけど。」 「まじ?いれるいれる。」 何だかよく分からない、トロミ。とかいう入浴剤を持ってきて適当に入れてやる。 「おーー、すげーすげー、トロトロだ。」 圭が湯を持ち上げてニコニコ笑った。 「僕、身体洗ったら上がる。」 「ほーい。あ、まって。」 「なに」 「一缶だけ2人で湯の中で飲もうよ。」 「僕に持って来いって?」 「うん。いつきが持ってくんの。」 有無を言わせない笑顔で頷かれて仕方なくタオルを巻いて酒を持ってくる。 あの、Sっ気の強い笑顔が怖いなとか思いつつ。 廊下が寒くて早足で風呂場に飛び帰った。 さっき、僕は無理とか思ってたのに、寒くて圭のいる風呂にざぶんと入る。 お湯がたくさん流れ出るのを、圭が子どもみたいな顔で眺めてた。 「「かんぱーい。」」 酔っ払って死亡事故なんて起こしたらシャレになんないから、一番度数の弱い酒を持ってきたのに体温のせいか、回りが早いように感じた。 圭もそうなのか、さっきからなにも面白くないのにクスクスと笑っている。
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