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夢を見た。
不思議な夢で、私は私じゃない誰かになって、私を見ていた。
泣いている私を。
だけどその涙は、お母さんに冷たくされたり、クラスの子から仲間外れにされたりした時に流してきた涙とは違う。
初めてできた友達に抱き締められ、嬉しくて流している涙だった。
「よかったね」
私じゃない私は呟く。
そして今までのことを思い出し、「あの子が泣いている時、いつも隣で慰めてきたのは私だったのにな」なんて少しだけ思って、寂しい気持ちになった。
だけどそれ以上に込み上げてくる、温かい感情。
いつの間にか自分の瞳からも涙が流れていることに気が付いた。
「よかったね、宇美」
もう一度、そう呟いた。
その瞬間、真っ赤な光が一際強く西の空から射し込む。
明るくて、眩しくて、美しくて。
そして夢の中、私じゃない私は、その光の中に溶けていった。
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