0人が本棚に入れています
本棚に追加
「宇美」
誰かの呼ぶ声が聞こえる。
その声は優しくて、心地よくて、なんだか逆にこのまま寝ていたいような気持ちになった。
それでももう一度呼ばれたのが聞こえたから、私はようやくゆっくりと目を開ける。
するとそこには、前の席から振り向き、私の肩を軽く揺すっている奈々ちゃんが居た。
「もうすぐ最終下校時刻だよ」
私が目を開けたのを見て、奈々ちゃんは言った。
しかし私はすぐに状況を理解できない。
暫く奈々ちゃんの顔をぼうっと眺めていて、ようやく思い出した。
ここは学校。
私は居残りでプリントをやっていて、奈々ちゃんはそれに付き合ってくれていて、それから......。
「えっ、私、寝ちゃってた?」
泣き出した私を奈々ちゃんが抱き締めてくれたところまでは思い出せたけれど、寝てしまった記憶はない。
いや、もしかしたらあの時にはもう私は居眠りしてしまっていて、奈々ちゃんとのやり取りや「友達だよ」って言ってくれたことも夢なのではないか。
そんな不安が生じたが、それは奈々ちゃんの次の言葉を聞いて、消えていった。
「もう、泣き疲れて寝ちゃうなんてちっちゃい子みたい」
奈々ちゃんは呆れたように笑って言った。
最初のコメントを投稿しよう!