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私が泣いたという事実がある以上、あの出来事も夢ではなかったと思って大丈夫だろう。
私は少し安心しながらも、結局こんな時間まで付き合わせてしまったことも含めて「ごめんね」と謝った。
奈々ちゃんは当然のように「いいよ」と答えてくれる。
だけど、もちろん当然なんかじゃないことは分かっている。
先に帰ってしまってもおかしくはなかったし、そうでなくてもこんな時間まで待たずに起こすだろう。
黙って待っていてくれる人なんて、きっと奈々ちゃんくらいだ。
「じゃあ、帰ろっか」
奈々ちゃんはそう言うと、立ち上がった。
私はそれに「うん」と頷いてから、机の端っこに追いやられていた一枚の紙の存在を思い出す。
「あ、でも、プリント」
「先生が今週中でいいって」
奈々ちゃんは私の呟きにそう返した後、「また明日、一緒にやろう」と言ってくれた。
私はその言葉が嬉しくて、さっきよりも大きく「うん」と頷き立ち上がる。
そして窓の方を振り返り、ユキちゃんにも声を掛けようとした。
しかし、そこには教室の風景と、随分と弱くなった赤い光があるだけだった。
「ユキちゃん?」
名前を呼び、反対の方も見てみる。
しかし、やっぱり居ない。
後ろを見ても、教室中を見回してみても。
「どうしたの?」
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