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中学生になって知り合った、クラスメートの菅山奈々ちゃんは、私のその言葉を聞くと明らさまに眉を顰めた。
「え?」
怖い顔。みんなそうだ。
私がこの話をすると、決まってこういう顔をする。
「どこに?」
厳しい口調でそう問われたが、それももう慣れていたので、私は自分のすぐ横を指差すと、平然と返した。
「ここだよ。でも、私にしか見えないみたい」
奈々ちゃんは、ますます眉間に皺を寄せた。
そして瞳を細めて睨むような目をする。
おかしなことを言われて怒ったのかな、と思った。
しかし、黙って私に数秒間鋭い視線を向けた後、奈々ちゃんはこう言った。
「どんな子?」
私はつい、びっくりしてしまった。
そんな質問されたこと、今までになかったからだ。
思わず「え?」と聞き返すと、奈々ちゃんはこう続ける。
「ユキちゃん、私にも見えないから。教えてよ」
その時私は、奈々ちゃんが私を睨んでいたのではなく、私の隣に居るユキちゃんを、目を凝らして見ようとしていたのだと気が付いた。
「ユキちゃんのこと、信じてくれるの?」
今まで誰も、信じてなんてくれなかった。
ユキちゃんのことを話すと、気味悪がられるか、嘘つきと呼ばれるかのどちらかで。
私の話を、それ以上聞こうとしてくれる人もいなかった。
だけど奈々ちゃんは私の問いかけに、迷うことなくこう答えた。
「信じるよ」
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