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西の空を、夕日が赤く染めていた。
今日はよく晴れていたから綺麗だ。
しかし私には、その夕焼けをゆっくり眺めている時間はなかった。
「それ、違ってるよ」
机の上にあるプリントを見て、奈々ちゃんが言う。
私は数学の問題を解いていた。
本当は授業が終わった後まで勉強なんてしたくなかったのだけれど、前回の定期テストの結果が悪かったので、先生にやってから帰るようにとプリントを渡されてしまったのだ。
けれど、奈々ちゃんは違う。
特別に成績が良いわけではないけれど、赤点は一つも取っていなかったはずだ。
だから当然、居残りする必要もない。
それなのに、「私はこのプリントができるまで帰れない」と伝えると、「じゃあ早く終わらせて一緒に帰ろう」と言って、教室に残ってくれた。
ユキちゃんのことを打ち明けた日から三ヶ月。
奈々ちゃんはいつも私に優しくしてくれている。
「だからそれ、足しちゃダメだって」
私の書いた計算式を見て、奈々ちゃんは少し呆れた様子で言う。
奈々ちゃんのためにも早く終わらせなきゃいけない。
そう思って、私なりに一生懸命取り組んではいたのだけど、なかなか結果は伴っていなかった。
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