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まだ半分以上残っているのに、この問題も分からない。
「なんで足しちゃダメなの?」
奈々ちゃんに指摘されたところをもう一度考えてみたけれどやっぱりできなくて、思わず頭の中の疑問を口に出してしまっていた。
しかしその直後、ハッとする。
「なんで?」とか「どうして?」とか私はすぐに聞いてしまう癖があって、ママに「やめなさい」と言われていたことを思い出したのだ。
「そういうことばかり言うから、みんなに嫌われるのよ」と。
だから、奈々ちゃんに対しては言わないように気を付けていた。
奈々ちゃんには嫌われたくないから。
「なんでって、それはそういう公式だし……」
奈々ちゃんは困ったように呟く。
面倒な子だと思われただろうか。
嫌われてしまっていたらどうしよう。
私は不安になって俯いてしまう。
しかし奈々ちゃんは暫く考えた後、あっけらかんとこう言った。
「なんでだろ」
それを聞いて、私はポカンとすると同時に、なんだか安心したんだ。
奈々ちゃんはすごく愛想がいいとか、優等生とか、そういうわけじゃない。
だけど、素直で心の大きい人だと思う。
私が変なことを言っても怒らないし、全然進まないプリントにも気長に付き合ってくれている。
だけどそんな奈々ちゃんに、私は何も返せていない。
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