0人が本棚に入れています
本棚に追加
いつも迷惑掛けてばかり。
「奈々ちゃん、先に帰っていいよ。私を待ってると遅くなっちゃうでしょ」
夕日がさっき見た時よりも低くなっていることに気付いて、そう言った。
しかし奈々ちゃんはそれを聞いても、特に大きな反応は示さなかった。
「いいよ。宇美、一人だといつになっても終わんないでしょ」
あまり考えた様子もなく、私の机の上にあったペンを触りながら、何気なく返してくる。
けれども私はその言葉に、過敏に反応していた。
「一人じゃないよ」
強い口調でそう否定して、チラリと横を見る。
私の左側、窓際には今もユキちゃんが立っている。
今だって、ちゃんとユキちゃんは私の隣に居るんだ。
だから、私は一人じゃない。
例え奈々ちゃんが居なくなったとしても、一人にはならない。
「うん、それは分かってるけど、ユキちゃん勉強は教えてくれないんでしょ?だから、私が帰ったら宇美一人で解かなきゃいけないって意味」
奈々ちゃんは私のペンを弄ぶのをやめ、丁寧にそう説明してくれた。
私はそれを聞いて少し恥ずかしくなる。
なんだか私の中の弱い心を見透かされたようだった。
「あ、そっか。うん、そうだね」
はぐらかすようにヘラヘラ笑って、頷いた。
そして、プリントに戻ろうとする。
最初のコメントを投稿しよう!