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しかし奈々ちゃんの視線がずっと私に向いたままだということには、気付いていた。
「宇美、私は信じてるよ」
真剣な表情、真っ直ぐな瞳。
なんとなく見えてはいた。
だけど、私は正面から受け止めきれず、中途半端に目を逸らしたまま。
「うん、ごめんね」
ただ、謝った。
そして、シャープペンを握り直すと、問題に向かう。
だけど、やはり自力では解けず、一旦放置して次の問題に移ろうとした時だった。
「宇美はまだ、私のこと信じられない?」
そんな声が聞こえて、私はピタリと手を止めた。
「え?」
思わず聞き返しながら顔を上げると、奈々ちゃんは私をじっと見つめていた。
その目は強い。
だけど、少し悲しそうにも見えた。
私はそれを、ただ眺めていることしかできなかった。
「……ごめん、やっぱりいいや」
奈々ちゃんは暫く待ってくれていたが、答えは返ってこないと判断したのだろう、少し無理矢理に笑顔を作っそう言った。
そして、黒板の上に掛けてある時計に目線を向ける。
「10分くらい休憩にしよう。私、ちょっとトイレ行ってくるね」
取り成すようにそう言うと、奈々ちゃんは立ち上がった。
そして私に背を向け、教室のドアの方へと歩き出す。
その姿を見た瞬間、私の胸に大きな不安が掠めた。
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