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このまま出て行ったら奈々ちゃんはもう戻ってこないんじゃないか、という不安だ。
みんなと同じように、私から離れて行ってしまうんじゃないか。
もう私と一緒には居てくれないんじゃないか。
そんなことを想像した。
だけど、例えそうなっても、平気だ。
だって私にはユキちゃんが居るから。
一人にはならない。
奈々ちゃんが居なくなっても大丈夫。
そう言い聞かせる。
しかしそれとは裏腹に、私はガタリと椅子を鳴らしてその場に立ち上がっていた。
「奈々ちゃん!」
気付くと、私はその背中を呼び止めていた。
奈々ちゃんは当然、私を無視するような子じゃない。
ちゃんと立ち止まって、振り返ってくれる。
「なに?」
その声に冷たさはなかった。
でも、私はすぐ言葉を続けられない。
何か言いたいことがあって呼び止めたわけではなかったからだ。
ただ、引き止めたかった。
奈々ちゃんに、居なくならないでほしかった。
「ごめんね。私、奈々ちゃんは優しくしてくれるのに、何もできなくて。いつも、迷惑ばかりかけて」
必死に絞り出したその言葉に、奈々ちゃんは首を振って「迷惑なんて思ってないよ」と答えた。
そして、一拍置いて、少し躊躇いながらこう続ける。
「だけど、時々思うよ。宇美は私が一緒に居ない方がいいのかなって」
初めて聞いた奈々ちゃんの本音。
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