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いつも落ち着いていて、大人で、優しい奈々ちゃんの悲しそうな顔。
それに気付いた時、私の中にあった壁のような蓋のような何かが壊れた気がした。
そして、そこに閉じ込めていた本当の気持ちが溢れ出す。
「そんなことない。私、奈々ちゃんに一緒に居てほしい。それで、迷惑かけてばかりだけど、いつか奈々ちゃんと友達になれたらって」
声が震えていた。
それは、緊張というより怖かったのだと思う。
受け入れられず、嫌われることが。
自分の気持ちを伝えても、拒まれることばかりだったから、その結果が容易に想像できてしまって。
そして奈々ちゃんは、その想像とはそれほど遠くない顔をした。
「何言ってるの」
それは、拒絶の言葉のように聞こえた。
私は俯き、唇を噛み締める。
だけど奈々ちゃんは離れて行くのではなく、逆にすぐ近くまで歩み寄ると、私の顔を覗き込んでこう言った。
「私たち、もうとっくに友達でしょ」
励ますような優しい声。
私は顔を上げた。
すると、いつの間にか霞んでいた視界に、ぼんやりと奈々ちゃんの笑顔が浮かんでいる。
それを見た瞬間、ポロリと涙が零れた。
奈々ちゃんはそんな私を両手で抱き締める。
「友達だよ」
もう一度、奈々ちゃんは私の耳元でそう言った。
私はその言葉に、何度も頷く。
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