第壱話 おごれる人

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 僕は正面に向き直り、アクセルを更に踏み込む。 「そんなことしたら歴史が変わっちゃって、僕らの存在自体なくなっちゃうだろうし」 「でも狒々や他の妖怪は何匹も倒してるじゃん」 「よくわかんないけど、あやかしの世界のことは、人間界の歴史にあんまり影響しないんじゃないの?」 「じゃあ、最強あやかしハンター〝征夷大将軍陽子様〟として名を残すってのは?」 「教科書レベルで歴史変えるつもり!? ていうか〝夷〟の意味わかってる?」 「細かいことうるさいなぁ。亀はそんなこと言ってるから亀なんだよ」 「亀じゃないし。それに、忘れたの?」 「何を?」 「都の人たちからしたら、僕らもあの狒々たちと同類だってこと」 「だからそれが納得できないって」  陽子様が操縦席の背もたれに体を預ける。 「何でアーム付きの大型トラックが妖怪になるわけ? 車は人類の叡智の結晶だってのに」 「しょうがないでしょ。この時代にはないものだから」 「それにこの、愛嬌がある赤いフロントグリル」 「顔はサル」 「頑丈でちょっと丸みを帯びたボディ」 「体はタヌキ」 「足回りだってしっかりしてるし、雑木程度ふみつぶしちゃうくらい頑丈」 「手足はトラ」 「テールのアームは自在に動いて爪でいろんなものを挟み込むし」     
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