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僕は正面に向き直り、アクセルを更に踏み込む。
「そんなことしたら歴史が変わっちゃって、僕らの存在自体なくなっちゃうだろうし」
「でも狒々や他の妖怪は何匹も倒してるじゃん」
「よくわかんないけど、あやかしの世界のことは、人間界の歴史にあんまり影響しないんじゃないの?」
「じゃあ、最強あやかしハンター〝征夷大将軍陽子様〟として名を残すってのは?」
「教科書レベルで歴史変えるつもり!? ていうか〝夷〟の意味わかってる?」
「細かいことうるさいなぁ。亀はそんなこと言ってるから亀なんだよ」
「亀じゃないし。それに、忘れたの?」
「何を?」
「都の人たちからしたら、僕らもあの狒々たちと同類だってこと」
「だからそれが納得できないって」
陽子様が操縦席の背もたれに体を預ける。
「何でアーム付きの大型トラックが妖怪になるわけ? 車は人類の叡智の結晶だってのに」
「しょうがないでしょ。この時代にはないものだから」
「それにこの、愛嬌がある赤いフロントグリル」
「顔はサル」
「頑丈でちょっと丸みを帯びたボディ」
「体はタヌキ」
「足回りだってしっかりしてるし、雑木程度ふみつぶしちゃうくらい頑丈」
「手足はトラ」
「テールのアームは自在に動いて爪でいろんなものを挟み込むし」
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