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「はいはい、陽子様の仰せの通りに」
「それだっ!」
陽子様が目を輝かせて僕を見つめた。
「な、何が?」
性格を知ってるとはいえ、見た目は絶世の美少女だ。僕は慌てて目をそらし、しどろもどろに聞き返した。
「〝陽子様〟! これが一番しっくりくる」
陽子様は満面の笑顔でうなずき、僕に言った。
「これからは、あたしのことを常に〝陽子様〟と呼ぶように」
「いや、別にいいけど」
彼女のわがままに反論してもろくなことにならない。
ただ、僕らの微妙な関係は公になっていないから、一応確認する。
「皆の前でも?」
「当たり前でしょ? なんてったって、あたしは将来の日本の王様だよ?」
「決まってないし、そもそも総理大臣は王様でもないし」
「細かいことごちゃごちゃ言わない! やっぱ、亀は亀だなぁ」
「亀じゃないし」
……そんなこんなでいろいろあったけど、以来、僕は彼女を〝陽子様〟と呼んでいる。
まあ、教室ではあまり話すこともないし、校内での接触は、ほとんど、陽子様と僕しかメンバーがいない謎の同好会、〝祇園精舎〟しかなかったけど。
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