第参話 祇園精舎

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第参話 祇園精舎

「総理大臣と言えば秘密結社ね」  陰謀論にはまった陽子様が思い付きで〝祇園精舎〟は結成された。メンバーは僕ら二人だけ。  まあ、それはいいけど、問題なのは活動内容だ。  総合のマンモス校故、校内にはいろいろな備品がある。  備品と言っても、ビーカーとか人体模型とかじゃない。  芝刈り機や除雪機は序の口、トラクターや大型ドローン、そして、ローダー付きの大型トラック。  高二の僕らには免許はないけど、いとこが整備工場をやってるのもあって、子供のころから車には興味があった。  それに、母体の一つが工業高校だっただけあって、車に関する授業もある。  大型なんて、自動車免許を取ってからもその先あれこれあるのに、構造や実技まで学べるのはありがたかった。  ……でも、そんな備品も、陽子様にとっては野望達成のための手段でしかない。 「今日はゾンビが攻めてきた場合を想定する」  高二の夏休み前、陽子様が突然言い出した。 「内閣総理大臣たるもの、いついかなる脅威にも対応できるようにしておかないとね」 「その脅威はフィクションだけのことだから」 「はぁ」  陽子様が大きなため息をついた。 「やっぱ亀は亀だなー」 「亀じゃないし」     
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