第一章

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 そうこうするうちに、時間が経ち馬車を走らせてさらに1時間が経った。 「ボーマ、あそこにちょっとした林が見えるだろう? あそこに馬車を停めてくれ」 「ういっす」  タイサが幌から顔を出し、ボーマの後ろから指を差す。その方向には舗装された道の右側、森と呼ぶには小さいが、十分な木々が集まっている場所があった。  タイサ達がその林に馬車を隠すと、今日はここまでと夜営の準備をタイサが指示し、街に着いてからの事を確認する。 「ここから先に進めば、恐らく魔王軍の空の偵察に引っかかるはずだ。それと明かりは遠くまで目立つ。今日の夜営では火は起こせないから、そのつもりで頼む」  バードマン。羽の生えた鳥人間はゴブリンを空から運んだり、高所から飛び道具を使って騎士団達を大いに苦しめた。さらに空から敵の位置や陣形を把握し、いち早く情報を伝えてくる。  これらはどれも極めて有効な戦術だったが、人間にはできない芸当でもあった。 「しかし、明日の朝にしろ、近付けばいつかは見つかります」と、エコー。 「見つかったら街に着く前に敵がやってくるかもしれないぜ?」ボーマも正論を吐く。  馬車を隠して歩いても、草原に身を隠しながら進んでも、いつかはどこかで見つかってしまう。ならばと、タイサはこのまま馬車で進むことを提案した。 「むしろ上空を警戒しないで進む方が、相手が一般人と誤解するかもしれない。幸い、空から幌の中までは分からないからな」  そしてゲンテの街に着いたら、まず自分が話に赴くとタイサは2人に伝えた。 「隊長、それは余りにも危険です!」 「だが、3人で行っても解決にはならないだろう? なら頑丈な俺だけが行って話をしに向かった方が安全だ」  エコーの言葉に、タイサは自分の身の上であっても悟ったように落ち着いて理由を話す。
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