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「戦いの後に人間の数と領土の半分を失って生き長らえる道と、全てを失う道と、どちらをとる?」
「………脅迫のつもりですか? 自分達はそれだけ強いと」
エコーの感情が籠る言葉に、シドリーはとんでもないと組んだ指を開く。
「シドリー司令官」
タイサが小さく手を挙げた。
「申し訳ないが、順を追って説明していただきたい。中には言えないこともあるでしょうが、遠回しな表現や結論だけ提示されても、こちらとしては答えようがない」
その言葉にエコーも落ち着きを取り戻し、ばつが悪そうに腰を下ろす。
「司令官、私から説明しましょう」
ウサギの紳士が腰を屈める。外見によらず渋い声である。
「初めまして。私は魔王軍の司令官補佐、及び参謀を務めていますイベロスといいます。早速ですが、まずは我々魔王軍が2つの勢力に分かれている所から説明しなければなりません」
それは壮大で複雑な話だった。
魔王軍には魔王の教えを深く守る魔王派と、魔王の教えを尊重しつつも必要なところは改革していく新生派に分かれていた。シドリーら、ここにいる魔王軍は前者にあたる。
「今年の始め、大きな話が我が国で起きました。それは、二百年間我々を迫害し、辺境に追いやった人間をどうするかというものです………ちなみに我々が魔王様の下、人間と共存していた時期があったことはご存じですか?」
タイサは魔王が王国によって作られたこと、その魔王の名の下、魔物達が集まり魔王軍を結成したこと、カデリア王国との戦争で共闘したことを説明した。
「では、その後のことからお話しします」
カデリア王国との戦争が勝利に終わり、領土を併呑したウィンフォス王国は大陸でも名だたる大国に成長した。
王国は魔王軍として参加した部族に、元々住んでいた場所を自治領として認め、さらに技術協力や相互通商を行ったのだという。
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