第三章

10/12
46人が本棚に入れています
本棚に追加
/171ページ
 そして二百年。魔物達は人間への復讐を果たそうとする新生派、それを反対する魔王派で意見が分かれてしまったと、初めの話に戻る。  シドリーが続きを話し始める。 「このままでは魔王様が愛したウィンフォス王国が滅亡すると考えた我々は、王国が滅びずに、かつ新生派にも納得できる形を模索し、実行することにした」  それがこの戦いだった。  圧倒的な実力で王国を攻撃し、魔王軍の存在を誇示させた上で停戦するつもりだったと彼女は話す。 「随分と過激な方法を実行したものですね」  事情は理解つつも、タイサは思わず呆れそうになる顔を手で隠した。  戦争にはなるが、敗戦という結果により王国は生き残る。新生派と呼ばれる魔物達も勝利という形で積年の恨みを晴らしたことになる。  確かに筋は通るが、1つ間違えば魔王派が王国を滅ぼす結果になりかねなかった。 「………話し合いという手はなかったのですか?」  エコーが複雑な心境で声を出す。  だが、シドリーは鼻で笑うように彼女の提案を一蹴する。 「我々を蛮族と見なしてきた人間が、対等な関係で交渉に応じるとでも?」 「ま、無理だな。これは時間がかかるとかそういう問題じゃないよ、エコー」  タイサが彼女の代わりに答えた。  そもそも歴史から葬った魔王の存在を認める時点で国家の存亡に関わる内容である。王国としても、まず認めるわけにはいかない。かといって時間をかければ、新生派の魔王軍が王国を滅ぼしに来ることになる。  タイサには魔王軍の事情が大体理解できた。 「すんません、質問なんですが」  ボーマが手を挙げた。 「大体の事情は分かりやしたが、話の中に魔王様の存在が全く出てこないのは何故ですかね? 今の魔王様が昔の人と同じかどうか分かりませんが、正直な話、魔王様が決断すれば一発で収まるんじゃないんですか?」
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!