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尤もな質問だった。
シドリーとイベロスが答えるべきか目を合わせる。
「ボーマ、恐らくだが今の魔王軍に魔王はいない」
タイサの答えに、シドリーは唇を噛んでいた。
当たらずとも遠からず。タイサは相手の反応を見つつ、自分なりの考えを披露する。
「そもそも魔王が絶対的な存在でいるのであれば、今回の戦いはそもそも発生しない。そして魔王が2派の対応に苦慮しているのならば、この戦いに魔王自らが参戦しているはずだ」
その方が話が早いからな、とタイサが簡潔に話を終える。
「その通りだ」
シドリーが悔しそうに口を開く。
「魔王様はカデリア王国との戦争終結の後、世界を冒険され、そしてお姿を消されたと文献に残されている」
山脈を越えた東の新天地は、魔王が姿を消す前に見つけてきた場所で、万が一の時にはそこに行く。これも言い伝えられたことだったという。
「とにかく我々には時間がなかった。そしてこれしか方法がなかったのだ」
シドリーの目に鋭さが戻っている。それは事の大きさを覚悟した上で動いてきた者の目であった。
「それで、自分にどうして欲しいと?」
タイサは自分から本題を振った。恐らく前の戦いでシドリーが撤退を決めた理由、封印されている黒の剣に関わることだとまでは予測する。
「タイサ、貴様は黒の剣を持っていたな?」
「ええ」
そらきた、とタイサは表情を維持したまま背もたれから体を離し、シドリーと同様に両手をテーブルの上で組んだ。
「我々にその剣を譲ってはくれないか?」
「………この剣は新生派を止めるだけの材料になる、それだけ魔王軍にとって重要なものなのですか?」
シドリーは一瞬驚いたが、組んだ指をほどくと大きく深呼吸した上で『そうだ』と答えた。
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