第四章

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「そもそも、彼女達の話は本当なのでしょうか? 単純に隊長から脅威となる武器を取り上げようとしているのではありませんか?」  まずはそこから疑うべき。エコーは副長として視野を広げた意見をタイサに投げかける。 「嘘を言っている様には見えない………だけじゃダメだろうな」「さすがに」  エコーは困った顔で口元を緩めた。 「考えがまとまっていないところがあるが、そこは適宜意見をぶつけてもらえるか?」  頭の中で考えても仕方がない。タイサは口に出すことで、また他者の意見を聞くことで物事を整理しようと決める。 「もちろんです。私は隊長の副長なのですから」  エコーはタイサの横に立ち、同じようにテラスの手すりに体を預けて夜空を眺めた。 「………まず、魔王軍が王国を完全に滅ぼしに来たのならば、そして領土を占領するには、持ってきた戦力が足りなすぎる。いくら強いと言っても、戦争は数だ。絶対的な数がなければ統治はできない。一時的にしろデルがゲンテを奪還できたことが良い証拠だ」  それはつまり、占領が目的ではなく、力を誇示しに来たというシドリーの主張と一致する。 「それに魔王軍の増援がない。馬車から見えた所だけだが、新しく兵が補充されたようには感じなかった。物資も王国側に設置されていた………本来なら敵の攻撃を受けづらく、かつ補給のしやすい場所、つまり王国の反対側にある東門に集積するのが普通だ」 「………確かに、言われてみれば。では東門に置きたくない理由があったという事ですか?」  エコーの言葉に、タイサは考え過ぎかもしれないが、と前置きした上で口を開く。 「すぐにでも再侵攻をするつもりだったか、それとも王国側よりも東から攻められることを警戒したのか」 「東からって………そこから東には王国の戦力なんかありませんよ?」  デルからの奇襲は東だったが、すでにデルは王国側にいたことは魔王軍も周知している。物資を移動させる程警戒する必要はないはずである。
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