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「万が一戦うようになれば、後方から援護をしてほしい………そう心配するな。俺だって1人で魔王軍全てを相手するつもりはないし、あの剣を使うこともなるべく避けたい」
呪いの黒剣に、ブレイダスで発見された呪われた鎧、今はタイサの身に変化はないが、一度戦闘になれば何が起きるか分からない。
「俺なら大丈夫だ」「………はい」
不安が拭えないエコーにタイサは肩をすくめて眉を上げる。
タイサは2人の顔を見てから頷き、見張りの順番を伝える。
「最初は俺がやる。次はエコー、最後の夜明けにボーマが担当する。交代時間は2時間半とする」「「了解」」
エコーとボーマは夜営の準備に取りかかる。とはいえ火を起こす必要がないので、干し芋と薫製肉をパンで挟んだ夜食と寝袋を用意するだけで終わる。
食事を終えた3人は、予定通りに睡眠を取り始める。最初の当番のタイサは馬車の荷台を点検し、車輪や軸に問題がないことを確認した。
今夜は薪の番はない、焚き火の暖かさから来る睡魔とは戦わなくてすむが、代わりに寒さと戦うことになった。
「隊長、毛布です」
エコーが荷馬車から取りだし、タイサに見せる。
「ああ、ありがとう。だが、眠ると体温が下がる。ボーマはあの体格だから必要ないだろうからエコーが使うといい」
タイサは片手を小さく振ってエコーが使うように諭す。初めは渋っていたエコーは結果として使うことになり、済まなそうな顔をしながら荷馬車の幌の中に顔を埋めた。
タイサは1人になった。
10分、20分と無為な時間を過ごす。明かりもなく、雲の合間から時折見せる夜空の星と2つの月のみが地面を照らしている。
虫の声も聞こえない。
タイサは馬車に体を預けると、自分の呼吸を唯一の音として左右に、そして上下に顔を動かしながら時間を潰した。
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