第四章

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「魔王軍が潰し合いにならない戦力差だった場合………王国は滅ぶしか道が残されていない可能性がある」  シドリーの魔王軍が勝利したのであれば、そこまで心配はしていないと補足してタイサは話を続ける。 「魔王軍77柱というくらいだから、77人の幹部がいるはずだ………俺達はその中の何人と戦ってきた?」  魔王軍の司令官のシドリーを皮切りに、ここにいる魔王軍が7人。タイサが西部方面で戦ったアロクス、その場にまだ2人いたという報告を信じれば3人。デルが倒したバステト姉妹の2人。フォースィがゲンテの街が襲われた時に倒した2人。ブレイダス防衛戦前に倒したとされる牛人間が1人。 「………15人。つまりあと62人いるという事ですね」 「大抵の場合、2派といっても大きな派閥が2つというだけで、全員がどちらかに属している訳ではない。10人か20人くらいは中立か、日和見を決める類の人げ………いや、性格のはずだ」  だが対立している2派が1つに絞られた場合、その中間層達は一気に生き残った派閥に吸収されるのではないかとタイサは危惧していた。 「潰し合いをさせた後に、吸収された62人の幹部達の率いる魔王軍。王国はこれに勝つことができるだろうか?」 「それは………」  エコーはそこまで考えていなかった。だが、77柱の2割の軍勢に領土の東半分を奪われている王国が、その2倍から3倍の敵に立ち向かえるはずはなかった。 「俺もエコーと同じ考えを最初にもっていた。だが、これには対立する2派の力がある程度拮抗していないと意味がない」 「ですが、それ以外の方法となると………」  シドリーの計画がエコーの脳裏によぎる。黒の剣を渡して魔王復活にかける。そして新生派を抑えるという策になる。 「隊長は、魔王の復活を良しとするのですか?」 「言い伝え通りならば魔王はウィンフォス王国に友好的なはずだ。手のひらを返して人間を滅ぼすとは限らないだろう」  それすら魔王軍の欺瞞工作だというならば、もはや手の打ちようがない。タイサは自虐的に両手を小さく広げ、夜空を支えた。
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