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「隊長は、ただの隊長です。それ以上でも以下でもありません………どうして他の多くの人の事を必要以上に意識しなければならないのですか?」
「………だが、俺の決断で、むぐぅ」「違います」
エコーは自分の体温が上がっていること、心臓の音が大きく弾んでいることが自覚できた。だが、それでも言葉を続けようとさらに両手に力を込める。
「誰が決断しても、決断しなくても、どこかで人は死ぬものです。今この瞬間でも世界のどこかで人は死んでいるんです。隊長は、そこまで人の死を意識しているのですか? 違いますよね?」
世界の人の死は単なる言い訳だとエコーは切り捨てた。
「隊長が心配していることは昔から変わっていません。隊長の迷いは………私達やカエデちゃん、デル団長や王女殿下の死を意識されているだけです。単純に自分の知る人を心配しているだけなんですよ」
「………エコー」
タイサの力が徐々に抜けていく。
エコーも両手の力をゆっくりと緩めた。
「いつも通りで良いんです。隊長の大切にしている人達がなるべく困らない方針を決めて頂ければ結構です。それ以外の人なんて気にしなくていいんです。もしそれを責める人がいるのならば、私がその半分を引き受けましょう」
タイサは何も答えなかった。
だがタイサの手の震えは止まっている。
そしてタイサの手はエコーのコートを掴む。
「エコーはいつも俺が欲しい意見を、必要な時に言ってくれるな」
「ありがとうございます………ですが、隊長は私が欲しい言葉を、必要な時には言ってくれない事が多いので困っています」「そ、それはっ………むぐぉ!」
タイサが慌てて起き上がろうとしたがエコーがそれを許さずに、再び強く抱きしめた。
「隊長の性格は分かっているので、このままの体勢で結構です。私としては今聞きたいんですが………宜しいでしょうか?」
エコーは耳まで赤くなっている。頭から湯気でも出ているのかもしれないと、エコーは長いように感じる一瞬を待つ。
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