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翌朝。タイサは眠い目を擦りながら身だしなみを整えて部屋を出る。
「おっと、隊長じゃないですか。おはようございま………あ、あぁ、副長もご一緒で」
廊下で鉢合わせしたボーマは、同じ部屋から出てきたエコーの姿を見て、気まずそうな顔をしつつも、すぐにいやらしい目つきに変わる。
そしてタイサの腕を肘で小突いた。
「ようやくですか。おめでとうございます」
「何の話だ?」
タイサがボーマの意味に理解できずに首をかしげる。ボーマはまたまたと口元に手を当てて、さらにからかおうとしたが、タイサの後ろでエコーが苦笑して首を左右に振っていることに気付く。
「………何もなかったので?」
「昨晩は2人で今後の方針について打ち合わせていただけだ」
ボーマがタイサの後ろを確認して、それが事実だと分かる。
ボーマはわざとらしく咳をすると、タイサの腕を掴んだ。
「隊長、ちょっくらいいですかね」
「あ、ああ」
ボーマは真剣な表情でタイサを隣の部屋に引っ張り込む。
そして扉を閉めると、すぐにタイサの胸倉を掴んだ。
「何で何もなかったんですか!?」
「はぁ!? お前、何を言って」
ボーマは違う違うと汗をかいた頭を激しく振る。
「隊長! どうして一晩一緒にいて何もないのかと聞いているんです! あれですか、隊長は女性に興味がないっていうアレですか!?」「違うわ!」
ボーマもタイサの性格は分かっていた上で、それ以上のことは言わなかった。
「普通はするものです」やんわりとボーマが教える。
「………済まん」
ボーマはタイサから手を離すと、タイサの胸を小さく小突く。
「自分の事を棚に上げて言いますが………もっと隊長は副長の気持ちに応えるべきです。隊長の不器用さはある意味では相手を想ってのことかもしれませんが、度が過ぎればそれは相手を悲しませることになることに気付いてくださいや」
副長が可哀想すぎる。ボーマが小さく呟いた。
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