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第五章
タイサ達はエプロン姿のオークに案内された食堂で朝食を済ませると、すぐに先日の会議室に来るようにとオセが面倒臭そうに伝えに現れた。
そして会議室。部屋には既に77柱の幹部が揃い、昨日と同じ位置でタイサ達を様々な思う出で見つめてきた。
「早々に呼んで済まない」
シドリーが短く声をかけると、タイサ達に席に着くように促す。
「先日の返事を聞かせてもらいたい」
黒の剣を渡すか否か。シドリーはタイサに決断を迫った。
タイサはエコーの顔を見ると、分かっていたかのように、エコーもまたタイサに向かって小さく頷いて見せる。
「決断の前に質問をしてもよろしいですか?」
タイサはシドリーの威圧に負けず、正面から弾き返す。
「黒の剣に魔王が封印されているとの話でしたが、あなた方はどうすれば封印が解けるのか分かっているのですか?」
分からなければ渡しても仕方がない。タイサはそう言い切った。
それは説明しなければ交渉を打ち切るという意味でもあった。
シドリーは静かにタイサの言葉を心の中に落とすと、一度だけ歯を噛みしめてから口を開く。
「………古い伝承がある」「司令官、よろしいのですか?」
イベロスが声を出したが、シドリーはこの際仕方がないと小さく首を振ってから話を続ける。
「世界の存亡、抗う力無き時、漆黒の剣を扱う者から余は再び現れる。全ての感情を糧とし、黒き霧を力とし、全てを捨てる覚悟で余を求めることを証明せよ………と」
「………分かりやすいような、分かりにくいような。一応言葉の意味はわかりますが………」タイサが眉をひそめた。
単語だけで言えば聞きなれた言葉の集まりだったが、具体的にどうすればいいのかまでは分からなかった。
「これはあくまでも我々の解釈なのですが………」
イベロスが会話の間に入る。
「ご存知の通り、黒の剣はそのあまりの強大な呪いにより、誰でも扱えるものではありません。つまり扱えるものが現れ、それを使わざるを得ない時点で、世界は何かしらの危機に瀕していると魔王様はお考えになられたのだと思います」
それが前半の解釈だと説明する。
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