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「後半は、復活のための方法です。司令官から聞きましたが、黒い剣により切った物、影響を受けたものは黒い霧になったそうで。そしてその黒い霧が剣に吸い込まれていくという事は物質が持つクレーテル、つまり魔力の源を吸収していることになります」
それが魔王の力の源になり、一定量の霧が必要なのだろうとイベロスが推測する。
「残った表現は『全ての感情』と『全てを捨てる覚悟』ですが………これは恐らく持ち主の命が必要なのだと考えられます」
「持ち主が………? それは本当ですか?」
エコーが思わずタイサの顔を見たが、イベロスが手を振って声をかける。
「今はまだ大丈夫です。ですが、この制限があることにより、持ち主自身が魔王を復活させ、世界を混沌とさせるということを防ごうとしているのでしょう」
「あくまでも世界のために自分が犠牲になる覚悟が必要だと?」
「はい。魔王様は自分の力が悪用されることを最後まで気にされていたのでしょう」
タイサの言葉にイベロスが頷き、魔王の素晴らしさに感心していた。
「だがその流れならば、この剣にはまだ黒い霧が足りていない、そして誰が犠牲になるかが決まっていないという2つの問題が残っているが………あなた方はどうするつもりですか?」
タイサは相手から全てを聞き出そうと尋ね続けた。
「そもそもこの剣を扱うことができなければ、意味がないのではないですか?」
剣を抜いただけでも、全ての恐怖が生きとし生けるものに襲い掛かりその動きを止める。身に付けている物ですら悉く黒い霧に変わる。見たことはないが、耐性のない人間が握れば自分自身が黒い霧に変換されることは容易く想像できるものだった。
もちろん力のある魔物ならば耐えられるかもしれない。その可能性は確かにある。
「………私が扱ってみるつもりだ」
「シドリー姉さん!?」
初めて聞いたとオセが立ち上がった。
シドリーはそれを静止させるように手を前に出し、オセを無言のまま座らせる。
「この魔王軍の司令官は私だ。この中では最も力がある………もしも私でも扱えないのであれば、ここにいる者達でも扱うことはできないだろう」
「………いいのですか? 失敗すれば黒い霧になるかもしれませんよ」
タイサは想像したことを見て来たかのように伝える。
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