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「隊長、こうやってまた2人でいるのは、あの集落以来ですね」
珍しい武具を作り出す鍛冶職人、その集落で火を挟んで話し合った時のことをエコーは思い出す。
「気温はここまで下がっていなかったがな」
あの時はイリーナが飛び込んできて散々な目に合ったとタイサが肩を震わせた。
そして口を開けたまま動きが止まり、慌てて左右の茂みを警戒する。
「どうやら誰もいないようです」
口元に手を置きながら笑っているエコーが代わりに報告する。
「そういえばデルは上手くいっただろうか」
ブレイダスで別れて1日。まだ王都にはついていないだろうが、着いた頃には王都には様々な情報が入り混じり、大混乱に陥っているだろうとタイサは予測していた。
魔王軍の存在、王国騎士団の敗北、ゲンテとブレイダスの街の放棄、騎士総長の戦死と王国を驚かせる情報には事欠かなかった。
そんな中、王都に戻らなければならない敗残の将の親友を想い、タイサは夜の空を見上げる。
「王国騎士団はこれからどうなるのでしょうか?」
素朴な疑問をエコーが尋ねてきた。
「正直な所、これだ、とは予想できないな。だが、権力に煩いイーチャウがこの事件を利用しない訳がない………奴の兄もそうだったが、救われない家系さ」
「イーチャウ騎士総長代理のお兄さん………確か隊長の入団試験で試験役を名乗り出た方でしたよね?」
10年近く前。入団前のタイサはデルと共に、イーチャウの兄と実戦形式での戦闘を行い、イーチャウの兄であるカウシンは片目を負傷する大怪我を負った。
入団前の冒険者に傷付けれらたとは言えず、いつしか刺客に襲われた、作戦で負傷したと騎士団の中で様々な話が飛び交った。
それによって事実は運良く濁されたのだった。
その後、蛮族との戦いで視界が狭くなった方向から偶然襲われたカウシンは致命傷を負い、戦死する。
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