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第三章
「そこまでだ」
タイサとアモンの戦いは1人の女性の声によって阻まれた。
「誰だ………って、大将かよ」
アモンが不満そうに振り返り、白い体毛をした猫メイド姿の女性を見て溜め息をつく。そして今の気持ちを表すかのように、両手の黒炎を払い消す。
「アモン、事前に話はしておいたはずだぞ?」
軽い足取りで門に戻ろうとするアモンに、それを視線で追いかけるシドリーが強い口調で声をかける。
「味見ですよ味見。本当に奴がそうなのかってな」
彼女の側で足を止め、アモンは肩をすくめた。
「んじゃ、あとはよろしくお願いしますぜ」
手を振りながら、アモンは街の中へと戻っていく。
タイサは持っていた剣を鞘に納めると、再び腰のベルトにつける。
「とりあえずはマシな状況になったかな」
「隊長!」
様子が変わり、エコーがタイサのもとへと走ってきた。
「おお、エコーか。どうやら上手くい………ごっふぉ」
エコーの拳がタイサの脇腹に沈む。
「また無茶をして! 武器を捨てて近付くなんて、何を考えているんですか!」
「しまった………忘れていたたたた。済まん、それしか思い付かなかった」
ボーマの馬車が遅れて到着する。
「いやぁ、相変わらずのようで」
暑くもないのにボーマが手で顔を扇いでいた。
「隊長! もう私は決めました!」
「な、何を」
指を向けて威圧感を全面的に出すエコーに気圧され、タイサの顔が引きつく。
エコーは大きく息を吸い込んだ。
「今後は絶対に隣に私が付きますから!」
「え、ええぇ!?」「えぇ、じゃありません! 絶対です! ぜ・っ・た・いです!」
ボーマが手を叩いて笑っている。顔を近づけてくるエコーのあまりの迫力に反論できないタイサは、ボーマを睨みながら口を尖らせた。
「隊長! 分かったら返事してください!」
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